――現実には難しい。

[画像のクリックで拡大表示]

 もちろん、あるべき姿としては、正しい方向です。逆に、パネリストの皆さんも簡単にできないことが分かっているからこそ、(あるべき論として)こうした意見が多かったのかもしれません。

 この理想と現実をどう結び付けていくのか。今回の3回の座談会ではそこまで議論できませんでしたが、本当は、その理想の世界を実現していくためにはどうしていくのかという点を深掘りしていく必要があると思っています。

――各職種が担うべき役割の変化に関する議論は、今回の座談会でも多くの発言があった「全体最適」「部分最適」の話題ともかかわってきます。

 米国では、各職種がかっちりと機能分化しています。機能分化をしていても、実は、それを一つにまとめあげる柱となる概念があります。では日本は…、と考えると、意外と全体最適を図るようなメカニズムがないのです。

 もちろん、お互い利益相反してしまうような部分最適の箇所同士が、それぞれしのぎを削り合って、結果として質が高くなるというのも、それはそれで良いと思います。ただし現状は、あえてしのぎを削り合わなくても、部分最適を集めるだけでなんとなく医療を提供できてしまっている状況といえます。

 では、この状況をICTの活用で解決できるのか。確かに、ある一部分は解決できます。私自身も石巻などでは、患者情報を共有するとか、看護師が持っている情報を医師もケアマネジャーも薬剤師も見るとか、そんな取り組みをしていますが、これらは各職種間のチームワークの醸成にはつながります。でも、それが全体最適につながっているかというと、決してそうではないのが実態です。