世界の有害化学物質規制が強まっている。新興国も欧米や日本と同様の有害物質規制を導入しつつあるのに加え、RoHS指令などの既存の規制では規制対象の化学物質が増える傾向にある。ビジネスのグローバル化に伴いますます対応が難しくなる有害化学物質規制。規制の現状と注意すべき点について、UL Japan UL Environment Business Development Manager 追谷 武寿氏に聞いた。(聞き手は吉田 勝)

UL Japan UL Environment Business Development Manager 追谷武寿氏
UL Japan UL Environment Business Development Manager 追谷武寿氏
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 大手メーカーでも化学物質管理が不十分なところは少なくありません。まして中堅・中小メーカーにはこれから海外企業と取り引きや輸出を始めるという企業も多く、海外への対応や、対象物質の拡大などを背景に化学物質規制に関する問い合わせが増えています。

 化学物質規制としては、欧州のRoHS指令やREACH規則がよく知られていますが、米国や日本、韓国、中国などに続いて規制の動きが世界中に広がろうとしています。新興国各国が同様の規制導入に向けてドラフトの策定を進めており、今は規制開始の一歩手前という状況なのです。先駆けとなったRoHS指令やREACH規則がデファクトスタンダードとなっていますが、表示や登録申請の有無、用意すべきエビデンスなど、細部は各国で異なっていて、全容を把握するのは実はかなり難しい。日本メーカーはそれらに十分注意を払っていかなくてはなりません。

サプライヤーに聞くだけではダメ

 既存の規制も変わっていくことにも要注意です。例えば、6つの化学物質の使用を禁止しているRoHS指令ですが、2013年1月の改正で「CEマーキングへの対応、適合宣言書と技術文書作成保管」が要求されることになりました。有害物質混入のリスクが高い製品については、どうやって評価しているかを明記してドキュメントとして残しておかなくてはなりません。

 これが案外難しい。これまで大手メーカーは、サプライヤーに規制対象の化学物質の使用の有無をヒアリングしていましたが、サプライチェーンが複雑・多様化してファブレス企業や海外工場を活用する企業が増える中、サプライヤーに確認するだけでは規制対応を担保できなくなりつつあるからです。