ケア・テック・ベンチャー」「オンライン診療」「ヘルス・ラボ」「ユマニチュード」…。これらをはじめとする100のアクションを2025年までに実施する。福岡市が2017年7月に始動した「福岡100」だ。寿命延伸に伴う「人生100年時代」の到来を見据え、誰もが100歳まで健康で自分らしく生き続けられる持続可能な社会システムの構築を目指すプロジェクトである(関連記事)

このプロジェクトは、「オール福岡」をキーワードに官民が連携して進めている。そこで日経デジタルヘルスは、官のトップである福岡市長の高島宗一郎氏と、民のトップである九州経済連合会会長の麻生泰氏の対談を企画。なぜ今「福岡100」に取り組むのか、その意図を探った。

対談の進行は、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン シニア クライアント アドバイザーで福岡市政策参与(福岡100)武内和久氏に務めてもらった。

(写真:諸石 信、以下同)
(写真:諸石 信、以下同)
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――まず、「福岡100」に対して、どのようなビジョンや思いを持っているのかを聞かせてください。

高島氏 少子高齢化は、世界の中で日本が初めて経験しているもので、これからの日本の成長を阻む大きな壁となります。これらの問題を何としても解決しなければなりません。

 こうした状況の下で、持続可能な社会を作り出すにはどうしたらよいのか。この問題に逃げ腰で対応するのではなく、前向きに取り組み答えを導き出せれば、それは福岡市だけでなく、日本、あるいは世界全体を一歩前に進めることにつながります。

 持続可能な社会を作るためには、医療や介護だけを充実すれば良いというものではありません。そこにはやはり、日常的な個人の健康づくりが不可欠です。健康期間を長くするとともに介護期間を短くしていくことが重要になります。

 このような個人の意識変革に加え、人々が支え合える地域づくりも必要です。認知症の人や単身高齢者の見守りを地域全体で協力し合える仕組みは、極めて貴重な財産となり得ます。これらに官民が一体となって、街全体として取り組んでいくことが福岡100の目指す姿だと考えています。

麻生氏 我々、民間企業の立場からは、意欲のある首長の下で福岡市が大きく変化しつつあることを実感しています。高島市長のリーダーシップやビジョン、行動力・実践力はとても魅力的です。我々としても「一緒になって大きくしていこう」という気持ちになるし、「官だけでできないことは、民がバックアップしよう」という考えにもなります。

 福岡市の勢いや雰囲気は、市民だけでなく福岡市以外の人々も感じるところでしょう。今の日本では、日本全体を一緒に盛り上げていくことは難しい。それならば、盛り上げられる場所は徹底的に盛り上げ、他の場所にはその恩恵を波及させていくことで、全体を底上げしていくしかありません。福岡市はまさに、盛り上げられる場所なのです。

 福岡100のような取り組みが、いずれは日本のため、さらにはアジア全体のためになっていくことは間違いありません。福岡市が先導者としてモデルづくりを進めていくことは非常に重要なことであり、我々としてもやりがいと責任を感じています。ひいては、それが我々のビジネスにもつながっていくと感じています。