災害時は72時間、15kWの電力供給

 総投資額に関し、きんでんは未公表としている。ただ、国内メーカー製蓄電池システムの導入コストは現在、10万円/kWhを切り始めた段階といわれる。NAS電池は、Liイオン電池に比べると相対的に低コストとされるが、それでも、ピークシフトによる電気代削減効果で、初期投資を10年程度で回収しようとすると、導入コストは現在の半分以下になる必要があるという。現段階では、蓄電池の導入には、BCPの価値を高めて、需要家に評価してもらう必要がある。

 そこで、きんでんは、今回、本社に導入した蓄電池と太陽光発電システムを連携させることで、災害時には、自立運転モードに切り替え、最大15kWの出力を最低72時間、供給できる運用制御を確立した(図5)。

図5●きんでん本社の模型。災害時にも最低72時間、重要負荷に電力供給できる(出所:日経BP)
図5●きんでん本社の模型。災害時にも最低72時間、重要負荷に電力供給できる(出所:日経BP)
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 15kWというのは、照明や災害本部の情報通信機器の電源など、本社ビルが緊急時に機能を維持するために最低限、必要となる重要負荷だ。NAS電池に約1MWhの充電量があれば、72時間、15kWを出力できることに加え、晴れていれば、30kWの太陽光パネルからの電力を優先的に使い、余剰分を蓄電池に貯めることで、72時間以上、電力供給できる。

 ただ、課題になるのは、災害時に外部の電力系統が停電し、本社ビルの内の構内系統をマイクログリッドとして運用した場合、太陽光の出力変動を蓄電池で吸収しながら、安定した電圧と周波数で電力を供給できるのか、という点だ。