蓄電池のPCSから「無効電力」制御

図10●蓄電池を制御する系統安定化制御装置(出所:日経BP)
図10●蓄電池を制御する系統安定化制御装置(出所:日経BP)
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 「系統安定化システム」はこうした場合に備え、配電系統(高圧送電線)の電流の変化(潮流変動)を観測し、それを打ち消す形で蓄電池を充放電する(図10)。この充放電制御は、最短で1秒間隔で制御できるという。

 こうした秒単位での電圧変動に対応して制御したとしても、太陽光の電力が大量に系統に逆潮され続けると、系統側の電圧が上昇してしまう恐れもある。その場合、蓄電池のPCSに「無効電力」制御の指令を出し、電圧の上昇を抑える。無効電力とは、実際に仕事に変換されない電力の成分だが、電気の流れをスムーズにする性質がある。これを積極的に系統に投入制御すると、電圧上昇を抑制できる。

 配電系統側の電圧が107Vを超えて上昇してしまうと、住宅用太陽光発電システムのPCSは自動的に出力を抑制する。蓄電池を使った系統安定化システムがうまく機能すれば、こうした住宅用太陽光の機会損失を減らせる可能性がある。

 一般的に系統の電圧上昇を防ぐには、電力会社がSVC(無効電力補償装置)やSVR(自動電圧調整器)などの設備を配電系統に導入することが多い。新蛇田地区の実証プロジェクトで、系統に連系した蓄電池を活用して電圧上昇を抑制する手法を確立できれば、従来の手法と費用対効果などを比較できる。