太陽光による短周期の電圧変動を蓄電池で抑制

図8●太陽光パネルは東芝製の多結晶シリコン型(出所:日経BP)
図8●太陽光パネルは東芝製の多結晶シリコン型(出所:日経BP)
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図9●太陽光と蓄電池用のパワーコンディショナー(PCS)はいずれも東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が製造(出所:日経BP)
図9●太陽光と蓄電池用のパワーコンディショナー(PCS)はいずれも東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が製造(出所:日経BP)
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 「石巻蛇田太陽光発電所」の太陽光パネルは東芝製の多結晶シリコン型(255W/枚)、蓄電池システムも東芝製Liイオン蓄電池「SCiB」を採用した(図8)。太陽光と蓄電池は、それぞれ専用のパワーコンディショナー(PCS)を通じて高圧送電線に連系している。いずれも東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が製造した(図9)。

 太陽光パネルのPCSは、発電した直流の出力を交流に変換し、昇圧器で電圧を上げて逆潮する。蓄電池のPCSは、双方向型になっていて、放電時は蓄電池の直流を交流に変換して逆潮し、充電時は、系統の交流を直流に変換して蓄電池に入力する。PCSの充放電制御は、系統安定化システムの「系統安定化制御装置」が指令を出す仕組みだ。

 「系統安定化システム」は、石巻蛇田太陽光発電所に加え、新蛇田地区に今後も導入が予想される大量の太陽光発電を安定的に系統に受け入れるためのものだ。同一敷地内の太陽光とは別々に連系しているのは、こうした役割を踏まえているからだ。

 同地区は、戸建住宅用地(約730戸)のほか、復興公営住宅(535戸・10棟)の建設が進んでいる。同地区内の太陽光発電は、石巻蛇田太陽光発電所と公営住宅の屋根上に加え、戸建て住宅でも導入する世帯が多くなりそうだ。東北電力は同地区ですでに91件の連系を承諾しており、公営住宅と合わせ約500kWになる。今後、新築の戸建て住宅が増えるに従い、最終的に1000kW(1MW)程度まで住宅用太陽光が設置されると想定している。

 太陽光発電が特定の地域に集中的に導入された場合、天候によって短時間で多くの太陽光が急峻に出力変動することがある。離島のような比較的、小規模な電力系統の場合、周波数の変動が大きな問題になる。石巻市のように規模の大きい本土系統につながっている場合、周波数変動はほとんど問題にならないが、地域的に電圧の変動を引き起こす可能性もある。こうした短周期での電圧変動には火力発電が追随できないため、電力品質が悪化する恐れがある。