国内で初めて「長周期変動」に対応

 蓄電池が短周期変動に対応する場合、瞬時の入出力(kW、MW)が重要になる一方、長周期変動への対応では、長時間、入出力できる容量(kWh、MWh)が求められる。

 Liイオン電池とNAS電池を性能面で比べると、充放電速度や効率面で、両電池とも短周期、長周期の両方に対応できる。ただ、「導入費用を比較すると、kW当たりの単価の安さではLiイオン電池に、kWh単価の安さではNAS電池に優位性があったため、導入コストを最小化する狙いからハイブリッドにした。加えてLiイオン電池は出力密度が高く、省スペースになる利点も評価した」(中国電力 流通事業本部 変電グループの島林順一氏)という。

 これまでにも沖縄電力や九州電力は、離島に大型蓄電池を設置し、再エネの出力変動を吸収する運用を実証してきた。例えば、宮古島には出力4MWのNAS電池、壱岐には4MWのLiイオン電池を導入済みだ。ただ、こうした離島での大規模蓄電池の実証は、太陽光や風力の短周期変動による系統周波数の乱れを安定化させることが目的だった。

 隠岐での蓄電池実証が画期的な点は、短周期変動への対応に加え、長周期変動への対策、すなわち、昼間の軽負荷期に発生する「太陽光の余剰電力」を吸収するために蓄電池を活用することだ。日中に太陽光の発電量が伸びてくると、火力発電の出力を落としていくが、ディーゼル発電機の場合、部分負荷は50%が限界とされる(図6)。それでも太陽光の出力が増えてくると、供給が需要を超えてしまい、系統全体がダウンしてしまう可能性もある。

図6●西ノ島にある黒木発電所ではディーゼル発電機が稼働する
図6●西ノ島にある黒木発電所ではディーゼル発電機が稼働する
(出所:日経BP)
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