東京都羽村市は、都心から西へ約45km。武蔵野の面影を残す雑木林が残る一方、日野自動車など工場も多く、住宅地と工業地域がバランス良く配置されている。羽村市役所は、JR青梅線の羽村駅と小作駅のほぼ中央にあり、両駅と市役所間を電気バス「はむらん」で結んでいる。羽村市が運営するコミュニティバスだ(図1)。

図1●電気バスを採用した羽村市コミュニティバス「はむらん」(出所:日経BP)
図1●電気バスを採用した羽村市コミュニティバス「はむらん」(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 環境問題への配慮から電気バスを導入する自治体は多い。走行中に排ガスを出さない電気バスは、市街地における大気質の改善に効果があることは間違いない。ただ、地球温暖化防止対策上の効果は、走っている電気バスだけを見ていても判断できない。

 電気バスは、搭載した蓄電池に電気を貯め、モーターを駆動して走る。温暖化対策としての評価は、蓄電池に充電する際の電気を、どんな発電方法で生み出したかで変わる。火力発電所の電気を使えば、走行中に排ガスはゼロだが、発電所でCO2を出したことになる。すべての原発が停止している東京電力管内では、電源の主体は火力発電が担っており、商用電力を購入して電気バスを充電した場合、少なからずCO2を出している。

 この点、電気バス「はむらん」は、温暖化対策としても、「CO2排出ゼロ」を達成している。太陽光発電で生み出した電気を使って、電気バスを充電しているからだ。

 羽村市は昨年12月7日、「CO2排出ゼロ」の交通システムを目指すプロジェクトの稼働開始式を開催した(図2)。プロジェクト名は、「All Zero Emission Mobile System(CO2排出量ゼロの交通システム)」を略し、「AZEMS(エイゼムス)」と名付けた。

図2●昨年12月にAZEMSプロジェクトの開始式を開催(出所:羽村市)
図2●昨年12月にAZEMSプロジェクトの開始式を開催(出所:羽村市)
[画像のクリックで拡大表示]