太陽光業界にとって注目すべき判決

 隣地の新しい建物により太陽光発電システムの日照が阻害されたとしてトラブルが発生するケースは多く、当事務所でも多くの法律相談を受けて参りました。

太陽光パネルへの影は、発電量の低下に直結する
太陽光パネルへの影は、発電量の低下に直結する
(写真はイメージで裁判事例とは関係ありません)(出所:日経BP)

 しかし、この論点について、明確に判示する裁判例がこれまで存在せず、法律相談の席上では、当事務所としての考え方を示し、アドバイスをして参りました(当事務所見解の詳細は、拙著「住宅用太陽光発電・プチソーラーの法律実務」中央経済社128頁以下をご参照下さい)。

 今回と次回の同コラムで取り上げる福岡地裁・平成30年11月15日判決は、上記ケースについて詳細に判示した初の判決であり、太陽光発電業界において注目すべき判決といえます。

発電所の隣地に予期せぬ建物が…

 福岡地裁判決が認定した事実は、以下のとおりです。本判決は非常に重要ですので、裁判所の判決をそのまま引用する形で紹介いたします。判決全文は裁判所ウェブサイトにて閲覧できます(判決全文)。

 まず、当事者間に争いがない事実として以下の事実を認定しました。

(1)  原告は、住宅地開発等を業とする株式会社である。被告は、スウェーデンより輸入する組立建物の製造、販売等を業とする株式会社である。

(2)  原告は、平成22年6月頃から、「A」(所在地:福岡県糸島市ab番地c及びd番地e。以下「原告住宅地」という)との名称で、住宅地の開発を開始した。(所在地につき、甲1)

 原告住宅地の南側には、福岡県糸島市ab番f及びb番gの土地(後記(5)の被告による住宅地開発前の地番。以下「被告住宅地」という。所在地につき、乙5)が隣接している。

(3)  原告は、原告住宅地の南端に位置する駐車場部分に、隣接する被告住宅地(南方向)から太陽光を受光することを前提とする太陽光発電設備(以下「本件設備」という)を設置することとし、平成23年3月頃、これを完成させた。

(4)  原告は、被告に対し、平成26年7月22日、本件設備に関して日照を阻害しないように配慮を求める書面を送付した。

(5)  被告は、前記(4)の原告の書面に応答することなく、平成26年11月頃から被告住宅地上に建物の建築を開始した。その結果、本件設備の一部分である太陽光モジュール(太陽光を受光するパネル部分をいい、以下「太陽光パネル」という)の1.25mから1.5mほど南側に建物が立ち並ぶこととなった(以下、被告がした一連の建築行為を「本件建築行為」という)。

(6)  原告は、平成29年10月26日付けで、福岡簡易裁判所に対し、被告を相手方として本件に関し民事調停を申し立てたが(同裁判所平成29年(公)第1号)、同調停は、平成30年1月25日、調停不成立となり終了した。

(7)  原告は、平成30年2月7日、本件訴えを提起した。