「受忍限度」を超えたと認められるリスク

 もっとも,原則として自己所有地に法令の範囲内で建物を建築することは可能です。そのため,隣人との関係で当該行為が「違法」と評価されるためには,侵害者の行為が社会的妥当性を欠き,これにより生じた損害が社会生活上一般的被害者において認容することを相当とする限度を超えたと認められることが必要となります(受忍限度論,最高裁昭和47年6月27日判決)。

 そして,受任限度を超えるか否かは,被害程度,地域性,被害及び加害回避の可能性など、さまざまな利益を総合的に考慮することにより判断されます。

 本件において,住宅会社が太陽光パネルを設置することにより実際にどの程度無線の使用に影響が出るのか,によりますが,生じる被害の程度が大きい場合(例えば,アマチュア無線の利用が全くできなくなってしまう場合)には,受忍限度を超える損害が生じたと評価される可能性は否定できません。

 他方で,隣人が被る損害は,あくまで趣味としての活動に過ぎないアマチュア無線の利用に支障を来す可能性があるという程度のものです。受忍限度論は,元来,公害事例やプライバシー侵害など、重大な利益との衡量のもとで生み出されたので,本件で住宅会社による建物建築に違法性までが認定される可能性は高くないでしょう。