太陽光発電事業では、多様な当事者が関係しており、例えば、設置されているパワーコンディショナー(PCS)の故障により発電が停止した場合、その責任が誰に帰属するのかの判断は存外難しい。

 ここでは、太陽光発電業者がEPC(設計・調達・施工)契約を締結して太陽光発電システムの設置を発注し、発電開始から2年後にPCSが故障して1カ月間発電が停止してしまった場合、太陽光発電業者は、どのような法的責任を追及できるかについて検討を行う。

「メーカー保証」は利用できるか?

 PCSが故障してしまった場合、まず、製造したメーカーの「メーカー保証」を利用できるかについて検討することが多いだろう。この場合、「メーカー保証」については法的にどのような意義を有しているのかを確認しておくことが重要である。

 法律上、取引をした商品の不備については、その取引の当事者が法的責任をもつのが原則であり、例えば青果店で購入した野菜が腐っていたとすれば、農家ではなく青果店に法的責任を追及するのが原則である。もっとも、メーカーは、自社製品の競争力を高めるため、一定の保証期間を定め、その保証期間内に製品の品質事故が生じたときに代替品の提供や修理等を行うというサービスを提供しており、一般的には、「メーカー保証」と呼ばれている。

 メーカー保証は、一定の条件を満たせば、代替品の提供や修理等のサービスを受けられるため、これを活用できるときには非常に有用なサービスである。

 他方で、メーカー保証は、メーカーが任意に提供しているサービスであり、ありとあらゆる製品に付されているものでもなければ、メーカーが「免責事由」を定めて製造工程の不備に起因するか判然としない品質事故について免責を定めていたり、保証により補償される範囲が限定されているのが通常である。

 以上から、メーカー保証により損害の填補を受けられない場合も相当程度あることを前提に考える必要がある。