太陽光パネルの倒壊で新幹線が不通に

 7月6日、線路脇に設置された太陽光パネルが倒壊し、山陽新幹線の運行が一時ストップするという事態が生じました。

 豪雨に見舞われた太陽光発電所のパネルが崩れ落ちる事故が発生するケースについての法的責任については、このコラムの第36回で取り上げました(関連記事:大雨を起因とする太陽光発電所の崩落事故が発生した際の損害賠償責任)。今回は、豪雨による土砂災害で発生した崖崩れにより、第三者に損害を与えた場合の法的責任について検討したいと思います。

「不可抗力」か、「工事の不備」か?

 線路脇に設置された太陽光パネルが倒壊し、山陽新幹線の運行が一時ストップした7月6日の事態では、造成地の端部にパネルが設置されていました。

 造成地の場合、事業用地を造成した土木業者に法的責任があるか?が問題となります。

 造成業者は、擁壁の造成に当たり、周囲の宅地・建物居住者の生命、身体、財産を危険に晒すことがないような安全性を確保すべき注意義務を負っているものということができます(最高裁・平成19年7月6日判決参照)。

 上記注意義務が認められる場面については、例えば、昭和49年に静岡県賤機山で起きた土砂災害について、静岡地裁平成4年3月24日判決が、擁壁工事について、「本件柵板工土留めは、豪雨時に背面からの土圧及び水圧によって崩壊する危険があるというべきところ、本件柵板工土留めは、降り始めからの積算雨量が、約229.5㎜に至るまでに崩壊しており、…この程度の降雨量は…過去の観測データーにおいても数回あることが認められるので、本件斜面がおよそ30度ないし40度の急傾斜地となっており、その下方に…本件事故の被災者の建物が多数所在していたことを考慮すると、本件柵板工土留めは、山の尾根下沿いの急斜面の土留として通常要すべき安全性を欠いており、瑕疵があったと判断せざるを得ない」と指摘したことが参考になります。

 ここで着目すべきは「この程度の降雨量は…過去の観測データーにおいて数回あることが認められる」と指摘していることです。裁判所は、このように想定内の降雨であったとして、「不可抗力」ではなく、「工事の不備」と判断しています(図1)。

図1●豪雨によって地盤が流れたメガソーラー(本文の内容と直接、関係ありません)
図1●豪雨によって地盤が流れたメガソーラー(本文の内容と直接、関係ありません)
(提供:中村満雄氏)
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