PID現象のリスクを公表する必要があるか?

 一般的には、取引後に当該商品に関して生じた事故について、積極的に説明を行う義務が生じるわけではありません。

 ただし、消費生活用製品である場合は、生命・身体に危害が生じた事故や、当該製品の滅失または毀損した事故であって、一般消費者の生命または身体に対する危害が発生するおそれのあるものであるときには、「消費生活用製品安全法34条」に基づいて情報提供の努力義務が生じる場合があります。

 製品欠陥について、公表して対応するものの典型がリコールです。

 リコールについては、「人への危害またはその可能性があるか」「拡大の可能性があるか」の判定によって決定される(日本建材産業協会「建材のリコールハンドブック」)、あるいは「事故の発生または兆候を発見した段階」でリコールを行うべきとの見解が示されています(経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック2010」)。

 PID現象は、単に予定されていた機能が発揮されないという事故であり、人への危害が発生するリスクがあるわけではないので、消費生活用製品安全法の趣旨からも積極的な情報提供の努力義務が生じるわけではありません。

 ただし、顧客は補修後も再度、事故が生じるのではないかという疑念を持つかもしれません。これを解消する範囲で説明することは望ましいと言えます。この点は、企業としての社会的責任が問われる範疇であり、法的義務まで認めなければならないものではないと考えます。

図3●PIDによる劣化に伴う電流-電圧特性の変化の例
図3●PIDによる劣化に伴う電流-電圧特性の変化の例
劣化が進むと出力がカーブ状ではなく直線的に落ちていく。人に危害を加えるわけではない(出所:ケミトックス)
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