隣地の新しい建物により太陽光発電システムの日照が阻害されたとしてトラブルが発生するケースは多いのですが、この論点について、明確に判示する裁判例がこれまで存在しませんでした。そうしたなか、福岡地裁・平成30年11月15日判決は、上記ケースについて詳細に判示した初の事案であり、太陽光発電業界において注目すべきといえます。
前回のこのコラムでは、同判決の一部を引用して、その要旨を紹介しました(関連記事)。今回と次回では、この判決の意義とポイント、今後の影響などに関して解説します。
福岡地裁判決の意義とは?
福岡地裁判決における争点は、本件建築行為が原告の権利又は法律上保護される利益を侵害するものであるか及び侵害するとしてその損害額です。
上記争点について福岡地裁判決は、「太陽光発電を行っている者は、発電設備への太陽光の受光について密接な利害関係を有するものであり、法律上の保護が及んでいないと解することは相当でないから、その者らの有する太陽光発電のために太陽光を受光する利益(以下「受光利益」という)は、法律上保護に値する利益に当たると解するのが相当である」と判断しました。
被告は裁判上、「太陽光を享受する利益は観念することができず法律上保護される利益と考える余地はなく、これを認めると新たな権利の創設になりかねない」と主張しましたが、福岡地裁判決は、「受光利益は、所有権に発する正当な土地の使用収益活動のための利益として相当の客観性を備えており、法律上保護される利益として観念することができる」とし、「これを認めることが新たな権利の創設となるものでもない」と判示しています。