本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1164号(2015年11月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]はじめに

 工作機械では“はかる”ことに事欠かない。製造時には計測しながら運動精度を調整し、各種補正パラメーター用にも計測する。また、製品の検査はまさに“はかる”ことそのものだ。納入時にも調整や最終精度確認のため計測するし、ユーザーも工具寸法の計測から治具や工作物のセッティング調整、加工物の精度検査など多くを“はかる”。

 多軸工作機械では、回転軸の中心位置誤差などの軸配置に関する幾何誤差が運動誤差の主要因の一つとなる。室温変化や床などの状態変化で数~数十μmの経時変化があるため、高精度な加工には機械が稼働する環境下で幾何誤差を計測・調整する必要がある。

 本稿では、まず多軸工作機械の一種であるパラレルメカニズム工作機械の精度キャリブレーションでの計測について紹介する。次に5軸工作機械が自身の運動誤差を自動計測して補正する知能化技術「ファイブチューニング」、測定した機体温度をもとに自律的に熱変位を補正する知能化技術「サーモフレンドリーコンセプト」も紹介する。