本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1164号(2015年11月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]はじめに

 科学技術用語としてのSurfaceは一般に「表面」と和訳されるが、厳密には物体の外表面すなわち実表面を指す場合(界面あるいは境界面とも称される)と、測定機器によって得られたデータの包絡面情報を指す場合とがある。後者はモデル化された面情報である。われわれが目にする描かれた像情報は、実は加工された画像データと言え、「表面」あるいは「面」には何らかの修飾語を伴う必然性がある。

 さらに、測定機器による包絡面情報は、測定手段や測定原理・方法により異なると推察でき、モデル化された面情報の表現法は千差万別である。そこで世界の識者は、修飾語、データ入手の方法、表現法に標準的規則を導入する活動を始めた。

[2]国際標準化機構(ISO)の動き

 ISOのTC(技術委員会)213では、Geometrical Product Specifications(GPS)すなわち製品の幾何特性仕様体系のマスタープランを1995年に提唱した。当時の基本規格はサイズ~エッジの18項目だったが、後にAreal surface textureが付加された。Areal surface textureでは、面内のx、y座標に対応する高さzのデータを主に取り扱う。arealの和訳に困ったTC213国内委員会とJIS原案作成委員会は、曲面情報がイメージされることを期待して「三次元」をあて、JISではAreal surface textureの和訳を「三次元表面性状」とした。

 物体と周囲環境の境界面を数量化する測定機器には、機械的な接触で検出する方法と電磁波の相互作用により検出する方法がある。ISOでは、得られるデータは測定方法によって異なることを前提に、前者をmechanical surface、後者をelectro-magnetic surfaceと表現している。