電柱向けに営巣防止装置を開発

 東神電気は、電力や鉄道、電信などの架線関連部材を手掛ける企業である。この一環として、架線周辺にカラスが巣を作ってしまうことで生じるトラブルを防ぐための営巣対策に取り組んできた。

 大林組が採用した装置は、2010年に開発が始まった。電力会社の送電線を支える電柱への営巣を防ぐ目的だった(図3)。

図3●電柱への設置例
図3●電柱への設置例
カラスによる営巣を防ぐ目的で開発した(出所:東神電気)
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 カラスは、さまざまなものを使って営巣する。衣類用のハンガーといった金属部材まで使われ、これが近くの電線に接触することなどによって、電線が地絡する恐れがある。こうした事故を効率的に防ぎたいという、電力会社の要望に応える対策の一つだった。

 カラスの営巣は、ほぼ2月~5月の間に限られる。カラスの営巣に向く電柱では毎年のように巣が作られる。電力会社では、営巣を発見次第、電柱に登って撤去している。カラスが営巣を諦めるような対策を実現できれば、こうした作業を少なくできる。もちろん、周辺の環境や生物、人間に悪影響を及ぼすような手法は採用できない。

 光を使った鳥への対策は、航空機などで先例があった。航空機では、エンジンに鳥が吸い込まれるバードストライクによる事故が知られている。この対策として、強い光を点滅させることで、鳥が近づきにくくなる手法が講じられている。

 同社では、この手法を応用し、LEDによるフラッシュ光を発し、カラスが嫌がる効果によって、営巣されにくくする装置を開発することにした。

 設置する場所は電柱のため、外部電源には頼れない。また、小型で軽いことが望ましい。カラスの営巣活動は、日中のみのため、光らせるのは日中だけで良い。

 そこで、太陽光パネルと電気二重層コンデンサ(キャパシタ)を組み合わせた電源で、外部電源なしで自立的に稼働する構成とした。太陽光発電電力をキャパシタに貯め、日中の発光に使う(図4)。

図4●日中に自立電源で発光
図4●日中に自立電源で発光
カラスの営巣は日中の活動のため、夜間は発光しない(出所:東神電気、一部、日経BPが加工)
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 外形寸法を小さくするためには、稼働時の消費電力を抑える必要がある。また、上空を飛んでいるカラスがターゲットになるため、フラッシュ光は上向きに発する。

 カラスの営巣時期である2月~5月前後に電柱に着脱する運用を想定し、2010年に最初の試作機を作製し、電力会社の協力を得て、カラスが営巣しやすい2カ所の電柱に試験的に設置した。その結果、営巣はゼロになり、有効性を確認できた。

 次の2011年には、フラッシュ光を発する角度や、LEDの発光色を変えた試作機を作り、同じように試験した。12カ所の電柱を対象とし、設置後は営巣がゼロに減った。

 3年目の2012年にも、さらに前年の経験も反映した試作機を、37カ所に設置した。この時には、設置後の営巣はゼロではなく、7カ所となった。この7カ所は、周囲に光を遮るものがあるなど、効果を十分には発揮しきれない場所だったという。

 このような結果から、従来の方式よりも高い効果が得られると評価され、製品化後は電力会社による採用が相次いだという。