1.はじめに

 デマンドレスポンスや地球温暖化防止などを背景に、これまで以上に節電や省エネルギー化、ワークスタイルの変革が求められている。また、オフィスの知的生産性向上への関心が高まるなど、業務効率の改善が課題となっている。しかしながら、蛍光ランプを外すなどの視環境の悪化を伴う省エネルギー対策も散見される。

 そこで、これらの課題を解決するため、LED照明に異なる色温度の素子を設け、PLC(Programmable Logic Controller)により高機能な制御を可能とし、執務者の要求に合わせた自由度の高い照明システムを開発した。

 さらに操作部であるGUI(Graphical User Interface)は、執務者ニーズに沿った高機能な制御を容易に行うことができるよう、マンマシンのインターフェースを開発することで、快適でかつ多様な執務空間作りと省エネルギー性を両立することを期待している。

2.これまでのオフィス照明の課題および問題点

 テナントオフィスの照明設備は最小グリッドやJIS Z9110などから計画されており、スクエア型蛍光灯器具(FHP)により机上面照度が750 lx 程度となる均質な配置計画が一般的である。しかし実際は、テナントごとに業種や部署、性別や年齢、什器や窓からの距離など条件が異なるため、執務空間の要求に差異が生じる(表1)。

表1 室用途と多様な推奨照度
表1 室用途と多様な推奨照度

 これを理由にテナント入居時に改修工事を行う場合も少なくない。各室用途に応じた雰囲気作りや照度変更を目的として、既存の基準照明を撤去し内装工事を行う。結果としてテナントの入退出ごとに膨大な廃材が発生することが課題となっている。

 また、時刻や天候により自然光は変化し、同一ビルでも高さや方位によって採光状況が異なるため、執務者の要求に応じた照明を一律に計画することは困難である。

 従来の蛍光灯器具では光の質や制御方式に制約があるため、新たに高品質で高機能な自由度の高い照明を導入することが技術的課題であった。

 以下、執務者の多様な要求に対応し、省エネルギー性を向上する、高機能なアンビエント照明「PLCを用いた調光調色LED照明」の概要を述べる。大阪市阿倍野区の超高層ビル「あべのハルカス」(延面積:約30.6万m2)に本格導入した本技術を事例として説明する。