「初期研修医が6人に増えた」

 淡路医療センターの加島氏は、神戸大学と長崎大学のバックアップによって取り組んできた、デジタルパソロジーを用いた病理診断支援と病理医育成のプロジェクトについて、病理専門医の認定取得を目指している立場から講演した。

 2014年に始まったプロジェクトは、淡路医療センターにおけるWSIによる病理診断の確率と病理医の育成を目的としている。同院は、病理診断科に常勤医が在籍しない時代から浜松ホトニクスのガラス標本スキャナーを導入し、徳島大学病理部の支援により迅速診断を行っていた。現在はPhilips社のスキャナーとの2システム体制とし、プロジェクトを推進している。

 プロジェクト開始当時は同院の病理システムを共有しながら、TeamViewerとSkypeを用いて長崎大学および神戸大学と同時にディスカッションできる環境を構築し、その場で診断確定を可能にした。「WSIを伝送して(担当医が)時間のあるときに遠隔診断してもらうことも可能だが、リアルタイムでディスカッションしながら検討できる環境は、病理の育成という目的では非常に有効な環境だ」(加島氏)という。

淡路医療センターが導入したコンサルテーションポータルの概要
淡路医療センターが導入したコンサルテーションポータルの概要
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 現在、このWebカンファレンス機能は、Philips社のコンサルテーションポータル(IGR Patho)で提供されており、加島氏が病理部門システムで診断した病理画像は、診断支援施設が異なるデジタルパソロジーシステムを導入していても、同院のサーバーにアクセスして診断支援できる仕組みとした。

 2年半のプロジェクト稼働期間に、年間4000例程度を診断、コンサルテーションポータルを使用した診断は導入後1年間で1000例を超えている。「こうしたデジタルパソロジー環境に惹かれたのか、プロジェクト開始後には初期研修医が6人に増えた。診断の質を低下させることなく、病理医の教育・育成にも有効に利用できているのではないか」(加島氏)と述べた。