医療用ソフトウエアとして保険適用第1号となった、医用画像や病院内映像を医療従事者間でリアルタイムに共有できるアプリ「Join」。これに、ウエアラブル端末で集める患者のバイタルデータ、さらには患者の容体や搬送先の人工知能によるアセスメントを組み合わせた救急搬送システムの実証研究を、東京慈恵会医科大学が2017年春にも開始する(関連記事1同2)。

日本医学放射線学会 秋季臨床大会で発表
日本医学放射線学会 秋季臨床大会で発表
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 主導するのは、同大学 脳神経外科学講座 先端医療情報技術研究講座 准教授の髙尾洋之氏らのグループ。「第52回 日本医学放射線学会 秋季臨床大会」(2016年9月16~18日、東京都)に登壇した同氏が、その構想を語った。

 髙尾氏は脳神経外科医であると同時に、慈恵医大グループへの3000台を超えるiPhone導入を主導するなど、医療のICT化の旗手として知られる。「通信の力で日本の医療を変える」(同氏)ことを掲げ、今回紹介したJoinの開発にも携わった。

 髙尾氏がとりわけ高い関心を寄せているのが、遠隔診療/遠隔医療。脳卒中のような「時間との勝負」(同氏)である疾患において、迅速かつ適切な診断・治療につながる可能性があるためだ。講演では冒頭、2015年夏の厚生労働省の事務連絡により、遠隔診療をめぐる動きが急速に盛んになっていることに触れた。「遠隔診療(の普及)が進んでいくことは間違いない」と同氏は見る。

 ただし、医師と患者を直接つなぐ「DtoP」の遠隔診療については、厚生労働省が2016年に入って、対面診療との組み合わせが原則である旨を確認するなど、揺り戻しの動きもある。そこでまずは、医師同士をつなぐ「DtoD」を先行させようというのが髙尾氏の考え。Joinはまさにそのためのアプリだ。