持続血糖測定器(CGM)と連携したインスリンポンプ療法(CSII)の進化は、クルマの自動運転実現への道筋と似ている――。

 大阪市立大学大学院 医学研究科 発達小児医学教室の川村智行氏は、そう語る。同氏は、「第18回 日本糖尿病情報学会年次学術集会」(2018年8月24~25日、秋田市)のシンポジウムで、「CSIIとCGMを組み合わせたclosing loopとAI」と題し、その詳細を語った。

大阪市立大学大学院の川村氏
大阪市立大学大学院の川村氏
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最初のパラダイムシフトはCGMの登場

 インスリンポンプ療法は、1型糖尿病など厳格な血糖コントロールを必要とする場合に、腹壁皮下に留置したカテーテルを通し、微量のインスリンを血糖値変化の傾向に合わせ持続的に自動投与する方法である。同療法における最初のパラダイムシフトは、CGMの登場だった。

 米Abbott Laboratories社の「FreeStyleリブレ」などのCGMの登場によって、間質液中のグルコース濃度から血糖値を算出し、そのデータを見ながら患者自らインスリンポンプを調整できるようになった。こうしたインスリンポンプ療法はSAP(Sensor Augmented Pump)療法と呼ばれる。「毎日4~5回行っていた自己血糖測定(SMBG)の煩わしさがなくなり、SMBGで分からなかった時間帯の高血糖、低血糖のトレンドが把握できるようになった」(川村氏)。

 次に登場したのが、CGMで管理するグルコース値が、低血糖の下限値に達するか、または近づくことが予測されると自動的にインスリン注入を中断。グルコース値の回復が確認されるとインスリン注入を再開するシステムだ。2018年2月に薬事承認され、同年3月に発売されたMedtronic社の「ミニメド640Gシステム」がそれだ。これにより、低血糖の回避と、その低血糖からの回復時にリバウンドで起こる高血糖を抑えることができるようになった。