モバイルPHRで「診療の質が高まる」

 比木氏は、この他にもWelbyマイカルテの運用や臨床研究によって見えてきた点についても触れた。その一つが、高齢者の活用である。

 モバイルPHRは、スマホを活用することから、一般的に高齢者の利用は難しいとされている。しかし、同社のアクティブユーザーを対象とした調査では年齢が上がるにつれ利用率が高くなり、「平均すると50代、60代が多く、高齢者には向かないという声は当てはまらない」(比木氏)という。「高齢者の方が比較的時間の余裕があり、(データや生活習慣の記録に)真面目に取り組んでいる傾向が読み取れる」(同氏)。

50代以上のシニアユーザーの利用率が高いWelbyマイカルテ
50代以上のシニアユーザーの利用率が高いWelbyマイカルテ
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 モバイルPHRによって診察の質が高まる可能性についても触れた。自治医科大学の協力の下、国分寺さくらクリニック(栃木県下野市)で実施した事例では、「HbA1cや中性脂肪の改善、体重変化といった点もあるが、興味深いのは医療機関と患者とのコミュニケーションスタイルが変わったこと」(比木氏)だという。

 具体的には、問診、指導、目標相談・決定といった診察時の時間配分を、モバイルPHRの利用群と非利用群で比較すると、利用群では指導に入る前の問診による聞き取り時間が減少し、その分を指導や目標設定の内容などの時間に費やせるようになったという。「モバイルPHRによってデータの見える化が進んだ結果であり、診察の質が高まったと言えるのではないか」(比木氏)。