2018年4月、米Intuitive Surgical社の手術支援ロボット「da Vinci Surgical System(通称:ダヴィンチ)」を用いたロボット支援下内視鏡手術の保険適用範囲が拡大した。直腸がんや胃がんなど新たに12の術式が保険収載されたのである(関連記事123)。

ダヴィンチ手術イメージ
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 保険収載されて1カ月、ダヴィンチ手術は着実に普及していると東京医科歯科大学 医学部附属病院 大腸・肛門外科 科長の絹笠祐介氏は話す。2018年4月に実施された直腸がんに対するダヴィンチ手術の件数は75件。これは、「従来の3倍のペースだ」(絹笠氏)という。

 しかし、手術件数は増加したものの実施施設数は変動していない。これは、「保険適用のための施設基準が厳しいからだ」と絹笠氏は見る。具体的には、直腸がんに対するダヴィンチ手術を10例以上実施した経験のある常勤医師が1人以上いることや、医療機関全体で直腸がんの手術を年間30例以上施行していることなどが条件になっている。

2018年5月17日に開催された「平成30年度第1回東京医科歯科大学記者懇談会」に登壇した東京医科歯科大学 医学部附属病院 大腸・肛門外科 科長の絹笠祐介氏
2018年5月17日に開催された「平成30年度第1回東京医科歯科大学記者懇談会」に登壇した東京医科歯科大学 医学部附属病院 大腸・肛門外科 科長の絹笠祐介氏
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 さらに、日本内視鏡外科学会が発表した提言には、ダヴィンチ手術を行う術者と助手は、ダヴィンチの製造販売業者および販売会社が主導するトレーニングコースを受講し、内視鏡手術支援ロボット使用に関するCertification(認定資格)を取得する必要があると明記されている。術者は日本内視鏡外科学会の技術認定医である必要がある。安全性を重視しているため、医療機関や術者が制限されているのが現状のようだ。

 一方で、多くの医療機関がダヴィンチ手術に関心を抱いているのが実情だ。現在、8つの医療機関が絹笠氏によるダヴィンチ手術の指導を待っているという。さらに、認定資格を取得するために同氏を訪れる医師は今年に入って40人を超えた。ダヴィンチ手術の普及に向けて、医療機関や医師の教育が今後ますます必要になるだろう。