川崎市(神奈川県)では、高齢化などに伴う社会課題を産業の力で解決する「ウェルフェアイノベーション」の一環として、独自で福祉製品を認証する「かわさき基準(KIS)」の認証・普及事業を推進している。この取り組みに関するイベント「第4回川崎市ウェルフェアイノベーションフォーラム 平成27年度かわさき基準認証福祉製品発表会」が、2016年3月24日に川崎市産業振興会館で開催された。

 開会に当たって登壇した川崎市長の福田紀彦氏はまず、高齢化や障害者に関する川崎市の現状と課題を紹介。川崎市の人口は2015年に147万人を超え、2030年まで人口が増え続けると予測されている。

川崎市長の福田紀彦氏
川崎市長の福田紀彦氏
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 その一方で、高齢人口も2050年まで増加。2050年には人口142万人に対して65歳以上の高齢者が50万人(高齢化率は約35%)になるとの推計があるという。現時点では高齢化率の全国平均が26%なのに対して、川崎市は18.9%。「川崎市は今、全国から見れば若い自治体だが、これからは一気に高齢化が進んでくる」と福田氏は警鐘を鳴らす。

 川崎市内で要介護認定を受けた人はこの10年で約2.7倍に増加。障害者手帳を持つ人も1.5倍になったという。高齢化が進めば「これらの数字は今後間違いなく増加する」と福田氏は見る。その上で、「これからも技術で新しいサービスや製品を生み出し、その力で社会が抱えている課題をもっと解決していかなければならない」との決意を示した。

「単純な介護製品で終わらせない」

 続いて、かわさき基準推進協議会会長でウェルフェアイノベーションフォーラム副会長の伊東弘泰氏が登壇。伊東氏はまず、かわさき基準(KIS)について「高齢者になったり、障害を持ったりしたとしても、住みなれたまちで、誰もが自立して楽しく安心に暮らせることを目指した川崎市独自の福祉製品の在り方を示した基準」であると説明。それを踏まえた上で、「現代社会は高齢者や介護を必要とする人が増えているが、施設に入ることなく在宅で生活している人が圧倒的に多い」ことに触れた。

かわさき基準推進協議会会長 ウェルフェアイノベーションフォーラム副会長の伊東弘泰氏
かわさき基準推進協議会会長 ウェルフェアイノベーションフォーラム副会長の伊東弘泰氏
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 このような社会は、「かつて予想した社会環境とはかけ離れたものとなっており、さまざまな問題が発生している」と伊東氏は語る。こうした社会情勢に対応するため、「かわさき基準(KIS)は認証福祉製品を単純な介護製品で終わらせるのではなく、高齢者や障害者のすばらしい生活を実現するための製品だと思っている」(同氏)とし、その実現に向けてかわさき基準(KIS)の活動を今後も継続していくとの抱負を述べた。