関連投資が活発な米国のデジタルヘルス業界では今、何が起きているのか――。日経デジタルヘルスが2018年2月5日に開催した『日経デジタルヘルス年鑑2018』発行記念イベント「デジタルヘルスベンチャー祭り2018」では、米国を拠点に活躍するベンチャーキャピタリスト、Kicker Ventures, CEOの清峰正志氏が登壇。「デジタルヘルス最新トレンドinアメリカ」と題し、米国のデジタルヘルス業界の動向について話した。

Kicker Venturesの清峰正志氏(写真:加藤康、以下同)
Kicker Venturesの清峰正志氏(写真:加藤康、以下同)
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ベンチャーとスーパーボウルの類似点とは…

 清峰氏は長く米国を活動拠点とし、2004年からは同国のベンチャー投資に携わってきた。冒頭、今日(米国時間2月4日)は米国にとって大切な日、すなわち国民的イベントであるスーパーボウルの日だと説明。アメリカンフットボールのスター選手であるトム・ブレイディ氏が、プロ入りの際、199番目に指名された選手であることや、そのコーチもプロ選手にはなれなかった人物であることに触れ、ベンチャー企業にも似た点があると話した。つまり「統計的には成功確率が低いが、ハードワークと少しの運で成功する可能性がある」(清峰氏)。

 スーパーボウルは米国社会の事情を知るのにふさわしいイベントだ。例えばテレビコマーシャルなどの広告費用が非常に高額になるため、スポンサーになれる企業は限られる。2016年には米Fitbit社が広告を出し、ヘルスケアベンチャー投資にかかわってきた清峰氏にとっては感慨深かったという。

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 米国のデジタルヘルス業界にとって「2017年は地殻変動が起きた激動の年だった」と清峰氏は振り返る。デジタルヘルスベンチャーへの投資額は過去最高となり、5~6年前の4倍以上に達した。この分野の投資家の数も増えているという。一方、「もう少し成功事例がほしい」(清峰氏)とも話した。

 特に重要な動きとして挙げたのが、FDA(米国食品医薬品局)が2017年7月に「Digital Health Innovation Action Plan」を始動させたことだ。その一環として、デジタルヘルスソフトウエアの承認を迅速化するPre-Certパイロットプログラムを立ち上げた。「デジタルヘルスベンチャーは従来、一般消費者とFDAのどちらにより目を向けるか、どっちつかずだった。FDAが方向性を示したことでベンチャーとVC(ベンチャーキャピタル)の目線が合うようになり、無駄を減らせる」と清峰氏は説明する。