独居老人の生活を支えるために、病棟の心電図モニターと同じような管理が在宅医療で確立できないか――。

 心臓血管外科医として、へき地・離島や在宅寝たきり高齢者の医療現場から、訪問看護施設を通じ主治医や専門医が遠隔医療を実施可能なシステムの確立を目指す岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の笠原慎吾氏。生体情報センサーマットとネットワーク対応型携帯心電計を用いた遠隔リアルタイムモニタリングシステムの開発と実際の活用について、遠隔医療に関する学術大会「JTTA Spring Conference 2016」(主催:日本遠隔医療学会、2016年2月12~13日)で発表した。

岡山大学大学院で高齢者社会医療・介護機器研究推進講座を持つ笠原氏
岡山大学大学院で高齢者社会医療・介護機器研究推進講座を持つ笠原氏
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 岡山市は在宅介護を推進する事業に関して、2013年10月に総合特区の指定を受けた。その1つとして、最先端介護機器を要介護者に1割の自己負担で貸与し、その効果を検証し、有効性を示す介護機器貸与モデル事業を実施。笠原氏らが開発した遠隔リアルタイムモニタリングシステムが採用された。

 実証実験は、介護特区事業に登録された高齢者11人のほか、遠隔医療を行っている茨城県牛久市の高齢者1人の見守り、運動負荷試験を行った家族性心房性期外収縮の20歳の女性、多発性脳梗塞で寝たきりになった94歳女性の看取りも対象として行ったという。

 遠隔リアルタイムモニタリングに用いたのは、ホルター心電計として認可を取得している独自開発のネットワーク対応型・多機能携帯心電計と、マット式の生体センサーの2種類。前者は胸に貼り付けるセンサー(発信器)と首にぶら下げる受信器で構成され、両デバイス間はBluetooth通信でデータ転送する。

 心電図、体動を検知する3軸加速度、体表面温度を計測することが可能。「ホルター心電図の結果に加え、通常体温が上がれば脈拍も上昇するが、そうでないような状況では心不全が強い、あるいは自律神経障害の診断に役立つ生体情報解析にも使えるようにした」(笠原氏)と説明する。