「代理機関」や立法措置を検討中

 最初に登壇したのは、内閣官房 健康・医療戦略室 企画官の堀内直哉氏。内閣官房は2013年に情報通信(IT)総合戦略室を設置。医療や防災、道路交通など、さまざまな分野でITの活用による国民の利便性の向上と行政運営の改善を目指している。

講演する内閣官房の堀内直哉氏
講演する内閣官房の堀内直哉氏
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 医療分野では、2018年度までに医療情報連携ネットワークの全国への普及・展開を目標に掲げる。2015年12月10日には、ITの利活用に関する方向性を「中間整理(案)」としてまとめ、現在はパブリックコメントを募集中だ(発表資料)。

 講演で堀内氏は、ITの利活用のために「代理機関(仮)」が検討されていることを紹介した。代理機関は、記名の医療情報データを集積し、統計処理や匿名化を施した上で第三者に提供する存在。

 医療分野で研究開発に使うデータに記名は必要ないが、一人の患者のさまざまなデータが同じ患者のものとして正しく突合される必要がある。例えば、急性期と慢性期で異なる医療機関に通った患者の記録が、匿名化されても同一人物のものとされ、経過を追えるようになっていなければならない。このため、各医療機関でデータを匿名化するよりも、代理機関が記名のままデータを集め、匿名化を含めて加工するほうが合理的であるという考え方だ。

 しかし、2015年9月に成立した改正個人情報保護法では、病歴が「要配慮個人情報」とされ、提供に本人の同意を必要とすることになった。このため、内閣官房では、医療機関で患者から発生するデータについて、本人の同意なしに代理機関へのオプトアウト方式で提供できるように、立法措置を検討する方向性を示した。代理機関を国がどのように認定すべきかを含め、今後、議論を進めるという。

内閣官房の資料。要配慮情報であっても、国が認定した事業ではオプトアウト方式で提供可能にする法整備が求められる
内閣官房の資料。要配慮情報であっても、国が認定した事業ではオプトアウト方式で提供可能にする法整備が求められる
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