東芝メディカルの「独立性保つ」

 2016年2月11日、10人ほどの社員を伴って説明会に臨んだ御手洗氏は、東芝メディカル代表取締役社長の瀧口登志夫氏から、事業概要や将来展望に関する説明を1時間以上にわたり受けた。同氏の語る東芝メディカルの経営理念“Made for Life”が「共生という我々のスローガンと共通の理念を別の角度から語ったものと感じ、感銘を覚えた」と御手洗氏は語る。

キヤノンの御手洗氏
キヤノンの御手洗氏
[画像のクリックで拡大表示]

 キヤノングループ入り後も、東芝メディカルには「最大限の独立性を保った経営をしてほしい」と御手洗氏は考えているという。基本的に「瀧口氏の経営方針に賛同する形で(東芝メディカルの経営を)見ていく」(御手洗氏)。

 「1937年の創業以来、医療には関心とあこがれを持ち続け、どうしても参入したいという思いを抱いてきた」。御手洗氏はこうも明かした。キヤノン初代社長で御手洗氏のおじに当たる御手洗毅氏は、医師。キヤノンは1940年に国産初のレントゲン撮影用カメラを開発するなど、日本における医療機器産業の礎を築いてきた実績もある。

 ところがそれ以降、「技術不足でそれ以上進歩しなかった」(御手洗氏)。X線撮影装置や眼底カメラなど、医療分野でいくつかの製品は育ったものの、医療機器メーカーとして大きなプレゼンスを持つには至らなかった。医療分野への本格参入は、創業以来の念願。東芝メディカル買収を「新しい事業のスタートといっても過言ではない」と御手洗氏が語るのはそれゆえだ。