地域間の「遺伝子情報の近さ」を解析

 2件のポスター発表にまとめた成果の1つは「Data Collection and Quality Assessment by Using Direct to Consumer (DTC) Genetic Testing Service」(一般消費者向け遺伝子検査サービスによるデータ収集とその品質評価)」と題するもの。従来の疫学研究でサンプルとしてきた血液ではなく唾液を使い、対面での問診をウェブアンケートに代えた今回の研究で、従来の疫学研究に劣らない品質のデータを集められるかどうかを評価した結果である。

 検査キットと解析結果の画面例
検査キットと解析結果の画面例
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 約30万カ所のSNPを調べた結果を、2次元座標にマッピング。従来の疫学研究をマッピングした結果と比べて両者の一致度を調べた。アジア系/欧州系/アフリカ系という人種の区分で見ると、得られた結果はアジア系の分布に合致。アジア系の中でも、日本人の分布に合致した。

 北海道/東北/関東甲信越といった、日本国内の地域別にみた場合のマッピングの傾向も、過去の疫学研究とよく合致した。地理的に近い都道府県でSNPの傾向が似ているという地域性だけでなく、東京や大阪といった「都市部では(SNPの傾向が)似通う」(ジーンクエスト 取締役の齋藤憲司氏)といった知見も得られた。単なる地理的距離とは異なる「遺伝子情報の地域間距離」を明らかにできたわけだ。

 もう1つの成果は、「Genome wide association study using direct-to-consumer (DTC) genetic tests in Japan(日本における一般消費者向け遺伝子検査サービスを活用したGWAS解析)」と題するもの。解析対象としたのは、肥満傾向の指標となるBMI(body mass index)に関連するSNPである。肥満傾向と関わりがあると従来から知られている「FTO遺伝子」の周辺にあるSNPが、BMIと相関を持つことを確認できたという。