国内初の次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査の実用化

 難聴の遺伝子診断には、遺伝子解析技術の進歩によって様々な解析方法が用いられてきた。その中で、2012年に保険適用になった「遺伝学的検査(先天性難聴)」でのスクリーニング法として用いられているのが、「インベーダー法」と呼ばれるもの。日本人の難聴患者データベースに基づいて、13遺伝子46変異を網羅的に解析することにより、効率的にスクリーニングすることができる。「現在、保険適用されたインベーダー法による遺伝子診断の変異検出率は30~40%程度。難聴に関与するとされる遺伝子は100種類ぐらいあるわけですから、検出率を50%、60%と向上させていくためには新規変異の追加が不可欠です。これを実現するためにはさらに効率的な解析が必要であるため、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析の臨床的研究に取り組んできました」(宇佐美氏)という。

 宇佐美氏らは、次世代シーケンサー「Ion PGM」の開発元であるサーモフィッシャーサイエンティフィック・ライフテクノロジーズジャパンや臨床検査大手のビー・エム・エルと共同で、次世代シーケンサーを用いた難聴遺伝子診断の研究を進めてきた。その結果、解析対象を19遺伝子154変異と大幅に増やすことで、従来法よりも10%以上、検出率を向上させることができたという。

「次世代シーケンサーを用いた解析を加えることで、希な遺伝子変異を含めた網羅的な解析が可能になりました。難聴に関与する遺伝子数、変位数を増やし、臨床にフィードバックすることで、検出率を向上させていくことができます」(宇佐美氏)。

 Ion PGMは2014年11月に日本における医療機器承認を受けており、臨床検査に利用できる日本で唯一の次世代シーケンサーとなった。次世代シーケンサーを用いた遺伝学的検査を保険診療で実施する国内初のケースであり、2015年8月からビー・エム・エルが受託を開始している。