がんや肺炎と並ぶ日本人の三大死因の1つ、心疾患。その大半を占めるのが、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患だ。心臓を取り巻く動脈(冠動脈)が詰まったり細くなったりすることで、心筋への血液供給が不足する疾患である。

 虚血性心疾患の治療では近年、従来の開胸手術に代えて、冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)と呼ぶカテーテル治療を行うケースが増えている。上腕や手首からカテーテルを挿し込んで患部に送り込み、風船(バルーン)で動脈を広げたり、金属製の網目状の筒(ステント)を留置したりする手技である。日本では年間に約25万件が行われている。

 ここにきて、そのPCIのあり方に一石を投じる指標が登場。その臨床上の意義について、循環器領域の学会などで熱い議論を呼んでいる。「FFR(Fractional Flow Reserve:心筋血流予備量比)」と呼ばれるものがそれだ。PCIにおいて、ステント留置術を行うべきかどうかをFFRを指標として判断し、“不要なステント留置”を防ぐ。そんな流れが生まれつつある。

FFR(一番左)と光干渉断層撮影(OCT)画像 (画像提供:セント・ジュード・メディカル)
FFR(一番左)と光干渉断層撮影(OCT)画像 (画像提供:セント・ジュード・メディカル)
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 FFRの測定システムを業界に先駆け2009年に発売した米St. Jude Medical社によれば、FFR測定システムの市場投入が「2016年に入り、複数社から相次いでいる」(日本法人のセント・ジュード・メディカル)。医療機器メーカーにとっても、FFRは循環器領域の重要な競争軸となりつつある(関連記事)。