光る技術を持つベンチャーと協力

 医療・ライフサイエンスに関して、NVIDIA社が特に力を入れるのは(1)医療画像、(2)医療情報、(3)ゲノム研究、(4)創薬の4分野。いずれもディープラーニングの活用が期待される分野だ。

 (1)の医療画像分野では、X線CTやMRI、超音波、内視鏡、病理などの画像の診断をディープラーニングで支援する。「少なくとも研究レベルでは、医療画像にディープラーニングを適用するのは常識になってきた」とエヌビディアの山田氏が話すように、医療の中でもAI活用が最も盛んな分野である。ある分野の学習モデルを別の分野に適用する「転移学習」などの活用が試みられている。

ディープラーニングを医療へ(資料提供:エヌビディア)
ディープラーニングを医療へ(資料提供:エヌビディア)
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 この分野でNVIDIA社は「モダリティベンダー(画像診断装置メーカー)と密にコミュニケーションするとともに、関連する学会などで情報発信を行っている」(山田氏)という。日本でも画像診断装置メーカーに対して、ディープラーニングに関する啓蒙や技術支援を始めた。「欧米のモダリティベンダーは、撮影後のデータ解析やそれをめぐるサービスに力を入れ始めた。日本のベンダーに対しても、撮影後のプラスアルファの価値創出を支援したい」と山田氏は話す。日本でも一部のメーカーや研究機関には既に、「DGX-1」と名付けたGPUベースのディープラーニング用スーパーコンピューターを納入した。

 NVIDIA社は、ディープラーニング技術に強みを持つベンチャー企業を支援するとともに大企業とのマッチングを行う取り組みにも力を入れており、医療分野でもこの枠組みを活用中だ。「ディープラーニング技術を自前で手掛けられる企業は少ない。そうした企業を支援できるスタートアップの開拓に力を入れている」(山田氏)。

 日本におけるパートナー企業として同社が名前を挙げるのは、PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)やエルピクセル、エクサインテリジェンスなど。いずれもディープラーニング技術を用いた画像診断支援に強みを持つベンチャーであり、例えばPKSHA TechnologyのX線画像診断支援技術は「実証段階で既に、読影医からとても参考になるとの反応が得られている」(山田氏)という。