CT画像の読影診断には、豊富な知識や経験が必要で時間がかかる。そんなとき診断の手助けをするのが、過去に撮影された類似の診断画像だ。診断画像の類似性から、ひもづく病名や電子カルテの情報を参考にすることで、総合的に診断することが可能になる。
今回実現したのは、AIを使って異常陰影の広がりが3次元的に類似した過去データを検索する技術。従来の検索技術では、2次元の断面画像の類似性を検証することしかできなかった。しかし、びまん性肺疾患のように臓器全体に異常陰影が立体的に広がっている場合には、断面画像は似ていても立体的に見ると類似しているとは限らない。そのため、断面画像が類似している症例を検索した後に、医師が立体的な類似性を確認する必要があり、時間がかかっていた。
そこで、臓器を中枢と末梢の立体的な領域に分け、各領域の異常陰影の広がり方を見る技術を開発した。これは医師が画像を見比べる際に行っている手法をAIで実装したもの。
今回はびまん性肺疾患の検索を行うために肺に着目した。まず、過去の撮影データを学習させたAIを使って、検索キーとなるCT画像(調べたいCT画像)中の異常陰影が広がる箇所を認識させる。次に、画像解析で検索キーを中枢と末梢の領域に自動で分割し、3次元の異常陰影の分布図を作成する。過去に撮影した検査画像も同様に異常陰影の分布図を作成しておき、検索キーと過去のデータベースの分布図を照らし合わせ、類似の分布図を探り出す仕組みだ。
ただし、CT画像上の肺を中枢と末梢の領域に分割することは容易ではない。なぜなら、「中枢側の輪郭の形状が複雑であるため」と発表会に登壇した富士通研究所 ソフトウェア研究所 メディアサービスプロジェクト 主任研究員の馬場孝之氏は話す。そこで、明瞭に写る末梢の輪郭と近似モデルを使って、境界面を推定する技術を開発した。