日本専門医機構による新専門医制度が、2018年4月にスタートした。患者から信頼される標準的な医療を提供できる、質の高い専門医を養成することを目的とした制度である。

 この新専門医制度に先駆け、新たな専門医認定制度を2016年から運用しているのが日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)だ。標準的で質の高い治療の提供と専門医の地域偏在の解消を目指したものである。

 実は、このCVITの専門医認定制度運用の一端を支えているのが、クラウドサービスを活用した技能評価・研修システムである。ハート・オーガナイゼーションが手掛けるクラウド型の症例共有コミュニケーションサービス「e-casebook」を採用している。

 さらに、そり取り組みを通してe-casebookの有効性を実感したことで、2018年1月からはオンライン技能研修ツールとしての利用も始めた。クラウドを活用した専門医認定の技能評価を進めるCVITの取り組みを追った。

2つの専門医制度の統合で生じた課題

 CVITは、2009年に「日本心血管インターベンション学会(JSIC)」と「日本心血管カテーテル治療学会(JACCT)」が統合されて誕生した。現在、約7000人のメディカル会員が登録され、約900人の専門医が認定されている。

CVIT 専門医認定制度審議会委員長の上妻氏
CVIT 専門医認定制度審議会委員長の上妻氏
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 統合前にはそれぞれ異なるシステムで運用されていた専門医制度は、統合後に一本化。JACCTの認定制度で行われていた実技審査を取り入れた。実技審査を継続した背景について、CVIT 専門医認定制度審議会 委員長の上妻謙氏(帝京大学 内科学講座・循環器内科 教授)は、次のように説明する。「冠動脈へのカテーテル治療は相応の技術力が必要であり、手技のエキスパートに到達した医師が認定されるべきという考えが強かった。一本化する中で実技審査のあり方に学会内で論争が続いたが、技術優先主義が制度上に残った」。

 2つの専門医制度が統合された際、移行処置として多くの専門医が生まれたこともあり、定員1100人という定員制度が設けられた。そのため、「常勤の専門医や指導医が在籍する施設」「年間症例数の多い施設」など、認定のハードルが高くなった。

 その結果、更新できなくなった専門医が年々多くなったり、専門医の地域間格差が大きな課題になったりする状況となった。「そもそも定員制度を設けたこと自体、“標準的な治療の提供”という考えから外れる。さらに、TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)など新たな治療技術が登場しても専門医不在により実施できない地域が出てきた」(上妻氏)という。