製薬企業各社のバリデーションに対応

 PVLink Camera Reportは「報告用アプリ」と「受付システム」という、2つの要素から成る。

 報告用アプリでは、iPhoneやiPadの内蔵カメラで「第一報連絡票」や「詳細調査票」と呼ばれる報告書の文面を撮影し、その画像ファイルをVPN(Virtual Private Network)経由で安全管理部門に送信する。同アプリは、画像のファイルサイズを自動縮小して通信負荷を軽減したり、台形補正/グレースケール/コントラスト調整を実行したりするといった自動編集機能を備え、医薬品名や情報源なども補足して送信できる。報告完了と同時に撮影画像を削除したり、未報告の画像は一定期間が過ぎると自動削除したりすることで、情報漏洩のリスクも低減している。

PVLink Camera Reportの概要(画像提供:キヤノンITソリューションズ)
PVLink Camera Reportの概要(画像提供:キヤノンITソリューションズ)
[画像のクリックで拡大表示]
報告用アプリの使用手順(画像提供:キヤノンITソリューションズ)
報告用アプリの使用手順(画像提供:キヤノンITソリューションズ)
[画像のクリックで拡大表示]

 受付システムは、安全管理部門に設置するサーバー上で稼働するシステムである。報告用アプリから受け取った複数の画像ファイルを結合してPDF変換し、指定のフォルダに出力できる。その際、MRに対しては受領完了メール、安全管理部門の関係者には受付連絡メールを自動配信する。

 iPhoneやiPadで副作用報告書の画像を送ること自体は、専用のアプリやシステムがなくても電子メール機能などを使って実行可能だ。ただしその方法では、誤送信や端末の紛失による情報漏洩リスクがあることに加え、「各製薬企業に独自のポリシーやバリデーションに沿った形ではデータをやり取りできない」(キヤノンITソリューションズ プロダクトソリューション事業本部 EDIソリューション事業部 第一営業部 営業二課の宮本伸男氏)という課題がある。これに対し今回のソリューションでは、導入企業ごとのポリシーやバリデーションに沿ったカスタマイズも行うという。

報告書の文面を取り込む(左、画像提供:キヤノンITソリューションズ)。A3モードで撮影すると、A4画像2枚に自動分割される(右)
報告書の文面を取り込む(左、画像提供:キヤノンITソリューションズ)。A3モードで撮影すると、A4画像2枚に自動分割される(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 PVLink Camera Reportの販売価格は、MR100名分のライセンス込みの「PVLink Camera Report Ver.1.0 ベースライセンス」が300万円(税別)。ここにMR100名分のライセンスを追加できる「PVLink Camera Report Ver.1.0 MRライセンス」が50万円(税別)である。PVLink Camera Reportは特定企業向けの受託システムとして開発したものを汎用化した製品で、先行ユーザー数社が利用を開始しているという。

 キヤノンITSはかねて、貿易や金融などの業界とともに製薬業界向けにEDI(Electronic Data Interchange)システムを提供してきた。同システムはPMDAへの副作用報告時の情報配信に使われており、国内製薬企業80社以上への納入実績があるという。PVLink Camera Reportはこれを補強するソリューションで、EDIソリューション関連事業で同社は2020年に売上高25億円を目指すとしている。