医療統計サポート事業でもFileMakerを駆使

 前田氏は、クリニック開業の2年前に医療統計学の実績を生かして、医療統計のサポートを行う「風の庵(かぜのあん)」を設立した。主な業務内容は、医学統計、生物統計を中心とした医療統計解析と、統計のためのデータマネジメント、FileMakerを用いたデータベースの構築、医療用ソフト開発などがある。また公衆衛生・疫学研究(社会医学)の視点から、予防医学を実践的により幅広くアプローチするために、今年になって、社会医学系専門医・指導医の資格も取得した。

 「大学や大学に準じる医療機関の勤務医は、医局や研究室が所有する統計解析システムや統計専門員のノウハウを用いて研究発表することができるが、一般病院の勤務医や開業医は解析を相談する人が身近に存在しないことが多く、せっかくデータを収集しても、論文執筆に必要な統計解析を行うことが難しい環境にあるのが現状だ。そうした医師のために、医学的な視点から客観的・中立的に研究を把握した上で、医療統計学的な視点を用いて、研究デザインおよび解析方法の草案・立案、査読者から戻された論文への対応など、論文がアクセプトされるまでの全過程を一貫してサポートできる会社を立ち上げた」(前田氏)と、設立の経緯を話す。

 データマネジメントや解析にFileMakerを利用しているほか、様々な医療系ソフトの開発にもFileMakerを用いている。例えば、臨床研究において、参加者をランダムに割り付けるためのランダム化ソフト(randMS)など、臨床治験・解析をサポートするソフトを開発し、提供している。

 また、一般のクリニックや小規模病院向けなどにも、臨床現場で役立つソフトを開発・提供している。生理検査や検体検査のデータを入力すると異常値や精密検査の要不要を判定する機能などを実装した「健診くん」をはじめ、頚動脈や腹部超音波検査の報告書作成を支援するソフト、糖尿病患者にインスリンを処方する際の単位を簡単に計算するソフト、症例写真を簡単に管理するiPhoneアプリなどの開発も行い、各医療機関の要望に応じてカスタマイズが可能である。

「健診くん」では、胸部レントゲン検査の手書き入力のほか、検査値入力後に「自動診断」を指定すると「医師の診断」欄や備考欄にガイドラインに定められている判断区分も含め自動的に入力される。
「健診くん」では、胸部レントゲン検査の手書き入力のほか、検査値入力後に「自動診断」を指定すると「医師の診断」欄や備考欄にガイドラインに定められている判断区分も含め自動的に入力される。
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