東京大学発ベンチャーのエルピクセルは2018年4月12日、「最先端医療×AI ~医療画像診断の未来~」と題するイベントを東京都内で開催。登壇した同社代表取締役の島原佑基氏は、AI(人工知能)を用いた医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」や、それを活用した医療機関などとの共同研究について紹介した。「AIは単なるブームではなく、しっかり(医療で)使われる。2020年までには、AIがあるのが当たり前と言われる時代を切り開きたい」と意欲を語った。

 医療画像診断の国内外の状況を見渡してみると、日本はX線CT装置やMRIの普及率が際立って高く、「医療画像大国」(島原氏)と言われる。その一方で放射線診断医は大幅に不足しており、読影の負荷軽減が大きな課題。ここにAIを活用しようという試みが盛んになってきた。

エルピクセル代表取締役の島原佑基氏
エルピクセル代表取締役の島原佑基氏
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 こうした背景からエルピクセルが開発し、2017年11月に発表したのがEIRLだ(関連記事1)。EIRLはエルピクセルが提供する、AIを活用した医療画像診断支援技術の総称。ディープラーニング(深層学習)やアクティブラーニング(能動学習)など機械学習の複数の手法から最適なものを組み合わせて活用し、X線CT画像やMRI画像から病変を抽出するなどの診断支援機能を実現する。

 エルピクセルはEIRLについて、まずは研究開発、ゆくゆくは臨床現場を支援することを目指す。臨床現場での活用を見据え、ソフトウエア医療機器としてPMDA(医薬品医療機器総合機構)やFDA(米食品医薬品局)の承認を取得することを目指している。多くの医療機関と共同研究を進めているほか、画像診断装置やPACSのメーカーとの連携も強化中だ(関連記事3)。  

 AIを用いた医療画像診断支援技術の開発例は少なくないが、その中でもEIRLには4つの差異化要素があると島原氏は説明する。第1に、AIに学ばせる教師データの質が高いこと。「専門医がダブルチェックやトリプルチェックしたデータを学ばせている」(島原氏)。第2に、少ない量のデータから効率的に学べるよう機械学習のアプローチを工夫している。

 第3に、ロバスト性を重視している。入力する画像の品質ばらつきや画像診断装置メーカーごとの特徴の違いによらず、正しく診断を支援できる能力だ。ロバスト性を高めるために、複数メーカーの画像診断装置の撮影画像を幅広く集めて学習させているという。第4に、API(Application programming interface)を提供し、ユーザー側の環境に依存せず利用できるようにしている。