疾患ごとの特徴や自己評価との違いを分析

計測結果画面
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インストラクション画面
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 Itch Trackerは、ResearchKitを用いて民間企業が日本で開発したアプリとしては、ジンズ(旧ジェイアイエヌ)による「JINS MEME MEDICAL LAB」に続く2例目である(関連記事1)。Apple Watch専用のResearchKitアプリは、世界でもほとんど前例がないという。

 このアプリではまず、アトピー性皮膚炎や肝機能障害、糖尿病など、かゆみを引き起こす基礎疾患の有無などを入力。就寝前後に、かゆみの強さの自己評価や薬の服用の有無、かゆみによる睡眠障害の自己評価などのアンケート項目に回答する。

 Apple Watchを装着した状態で眠ると、皮膚をかいた時刻やその動作の持続時間が自動計測される。データはiPhoneと連携し、就寝中に皮膚をかいた合計時間の推定値や、それが睡眠時間全体に占めた割合をアプリが算出して表示する。かく動作が10秒以上続いた時間があったかどうかも判定。これらのデータはサーバーにも送信され、蓄積される。

 ネスレ スキンヘルスはItch Trackerの開発に当たり、アトピー性皮膚炎の患者や皮膚疾患を持たない人を対象にした検証を実施。設定した計測のしきい値では検出されないほどわずかな動作や、Apple Watchを装着していない方の手の動作を含む、合計のかき時間を精度良く算出するアルゴリズムを開発した。Apple Watchで検出されるかき時間の3倍の値が、合計のかき時間を精度良く表すことが分かったという。

 研究では、就寝中に皮膚をかく動作に「疾患ごとの特徴があるかどうかや、かゆみの強さの自己評価との違いが表れるかを検証したい」と生駒氏は話す。全世界で研究を進めるメリットを生かし、人種別の解析なども行う計画だ。