AIベンチャーのエクサウィザーズは2018年3月29日、産業革新機構など8社から総額8億9000万円の資金調達をしたと発表した。今回の支援を受け、エクサウィザーズはAIを活用した4つの取り組みを実施する。(1)介護ケアのエビデンス・ベースド化、(2)介護データ解析サービスの無償提供、(3)ユマニチュードの普及、(4)ケア指導技術「コーチングAI」の開発と普及、である。

資金調達の概要(プレスリリースより)
資金調達の概要(プレスリリースより)
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 (1)の介護ケアは、これまで科学的エビデンスがきちんと示されていないものが多かったという。そこで、AIを活用して動画や音声、テキストなどのデータを解析することで、優れたケアの動作や対話の評価手法を確立したい考えである。

 (2)の介護データ解析サービスは、自治体に向けて無償で提供することを想定する。自治体が持つ介護データをAIで分析し、介護度がどのように推移するかを予測するサービスである。

 特に認知症に関しては、時間の経過と共に症状が進行していくので、認知症ケアの介入効果を検証することが困難だった。AIを使って介護度の推移が予測できれば、介入効果の可視化が可能となる。さらに、事前に介護度の予測ができれば、適切な予防介護も行うことが期待できる。

 (3)のユマニチュードの普及は、かねてエクサウィザーズが注力してきた事業である。ユマニチュードとは、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4本柱を重視した認知症ケア技法。2016年度には福岡市でユマニチュードの実証実験を実施し、被介護者の認知症行動や心理症状が軽減することが明らかになったという。

ユマニチュードを実践しているイメージ
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ユマニチュードのコーチング概要
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エクサウィザーズ 代表取締役社長の石山洸氏
エクサウィザーズ 代表取締役社長の石山洸氏
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 (4)のコーチングAIとは、画像や音声などのデータを解析することで、熟練者のケア技法の特徴を抽出し、初心者の学習を支援するサービスである。エクサウィザーズ 代表取締役社長の石山洸氏は、「ユマニチュードを習得できるプログラムも開発したい」としている。

 産業革新機構は介護分野を重視しているといい、同社 専務取締役 最高戦略責任者の浜辺哲也氏は「意義のある投資だった」と強調した。