持参薬管理表の作成を効率化

 薬剤の識別・検索を効率的かつ的確に実施するために工夫しているのが、薬剤の高品質画像を表示する機能だ。ライセンス購入した剤形写真データをマスター化して様々な場面で利用している。検索結果に添付するほか、絞り込んだ候補からの選択時や持参薬鑑別管理表の作成、薬剤情報提供書の作成などの場面で薬剤の写真を表示することで、スピーディーな識別を実現した。実際の薬剤との確認作業も容易になるため、識別ミスの削減にも大きな役割を果たしているという。

 ただし、ライセンス提供されている薬剤写真データの多くは画像サイズが小さく、そのままでは識別コードを判読できないものが多い。「患者さんに渡す薬剤情報提供書では剤形と色が分かればよいのですが、持参薬確認などの作業では、識別コードまで判読できることが不可欠です。そのため約1万5000種類もの剤形写真データを加工し、識別コードを判別できるようにしました」(木村氏)と実効性のためのこだわりを見せる。

 iPad Pro上では表示領域が広いため、検索・識別した薬剤の用法・用量を同一画面上で入力・表示できる。食後・食前・食間、朝・昼・夕・就寝前などの服用タイミングと何錠服用かを選択すればよい。入力した情報は薬剤写真で表示されるため、一包化された現物と見比べてチェックできる。iPad miniなどでも用法・用量の入力や写真表示は可能だったが、検索・識別画面とは別画面にせざるを得なかった。

表示領域が広いiPad Pro(右)は検索・識別領域と用法・用量の入力領域を1画面に表示可能
表示領域が広いiPad Pro(右)は検索・識別領域と用法・用量の入力領域を1画面に表示可能
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 1画面表示が可能になったことで、持参薬管理表の作成も容易になった。採用薬の情報は基幹システムからFileMakerに取り込んでいるため、識別後に用法・用量を入力すれば、持参薬管理表画面には、識別結果・薬剤写真・医薬品名・薬効に加え、採用薬であるか否か、採用薬でない場合は代替採用薬が表示される。これを印刷すれば、ただちに持参薬管理表を作成できる。

薬剤鑑別が終了すれば、持参薬管理表もすぐさま作成できる
薬剤鑑別が終了すれば、持参薬管理表もすぐさま作成できる
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プリントアウトすれば持参薬管理表が完成
プリントアウトすれば持参薬管理表が完成
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 一方、病棟看護師などはiPad miniを利用している。「現物の医薬品情報を調べたいときに、その場で情報を得られるので好評です」(木村氏)。実際、iOS版導入後は、薬剤部が看護師からの問い合わせに時間を割かれることはなくなったという。

 「薬速」の様々な機能やユーザーインターフェースは、スタッフにとって“かゆいところに手が届く”ものになっている。現場ユーザーによってシステムの評価と改修を効率的に繰り返しながら実現したものであり、FileMakerの使い勝手の良さを生かしたユーザーメード医療ITと言えよう。

■病院概要

名称:
特定医療法人 恵済会 ゆうあいホスピタル
所在地:
徳島県三好郡東みよし町中庄728番地1
開設:
1958年(四国共立病院として開設)
理事長:坂本哲郎氏
診療科:精神科、心療内科、内科
病床数:精神療養120床、精神一般100床
Webサイト:http://yuai-hp.com/
主要導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Pro、FileMaker Server、FileMaker Go」、Apple「iPad Pro、iPad mini他」