東芝が挑むのは、この課題の解決だ。「Open Nail」と名付けた今回のプロジェクトでは、個人の爪の形状を正確に抽出し3Dプリンターを活用することで、外れにくいネイルチップの実現を目指す。
具体的な流れはこうだ。まず、利用者は百貨店や商業施設で指先をスキャナーで撮影する。撮影データを東芝のクラウドに登録した後、同社の画像認識の技術を応用して爪の形状や輪郭線を抽出する。利用者が欲しいネイルチップをスマートフォンから注文すると、登録されたデータを基に個人の爪に合ったチップを3Dプリンターで作成。ネイルチップベンチャー企業であるmichiのネイリストがチップに装飾を施し、注文から3週間で自宅に郵送される。
利用者が時間を拘束されるのは、爪を撮影するおよそ30分のみ。「子育てや仕事で時間がないためネイルアートをやめてしまった人が周りに多かった」(東芝 技術統括部 技術企画室 主務の千木良康子氏)ことを受け、利用者の負担を最小限にした。
実際、東芝によれば20~40代のネイルに関心がある女性を対象にしたある調査では、7割の人はネイルに関心があってもネイルアートをしていないことが明らかになったという。理由としては、「忙しい・時間がない」という意見が32%、「面倒くさい」が27%だった。ネイルアートの選択肢としては、ネイルサロンでの施術と自分で装飾を施すセルフネイルの大きく2通りに分類できるが、「ネイルサロンは時間がかかり、セルフネイルは面倒くさい」と千木良氏は分析する。今回のプロジェクトでは、これまで関心があってもネイルアートから遠ざかっていた層を取り込みたい狙いだ。
事業化に向けて、2017年4月下旬からの大型連休を目途に、「渋谷ヒカリエ」などの商業施設での一般向け実証実験を予定している。