医薬品にプラスアルファの価値を

 「Beyond the Pill」――。これが、今回の取り組みをひも解くキーワードだ。

 MSDは2010年、今後10年の経営目標として「日本で最も優れたヘルスケア企業になる」ことを掲げた。そこに向けたビジネスイノベーションを示す言葉が、Beyond the Pillである。「医薬品提供の価値をより高めるとともに、医薬品提供にとどまらないサービスやソリューションの提供者となることを目指す」との意味を込めた。

 MSDが医薬品ビジネスの“先”に見据えるのは「高齢化や社会保障費増大などの社会的課題と、そこから派生するさまざまな課題に挑む」(樋渡氏)こと。そのために必要な「イノベーティブなソリューションを手にしたい」(同氏)との思いが、ヘルステックプログラムの背景にはある。「社内だけではリソースが限られる。スタートアップと組むことがブレークスルーを生む」(同氏)。

 その際、ヘルスケアの未来にとりわけ大きなインパクトを持つとMSDが考えたのがICTだった。ICTの進化は「人々の行動に変容をもたらしている。IoTを活用し、ライフログなどが容易に取得できるようになってきた」(樋渡氏)。こうした技術の中に、価値創出のタネがあるとにらむ。