「除草剤=毒薬」となった背景

伊藤(幹) 除草剤に対する一般人のイメージダウンとは裏腹に、地方では、ほぼ100%の農家が除草剤を使っています。背景には、すでに除草剤がなかったら、農作物を作れないという現実があります。就農人口が減っても、耕作面積がそれに比例して減っていないのは、除草剤が普及したことで、生産性が大幅に上がったからです。

 特に都市部で、「除草剤=毒薬」というイメージができてしまった背景には、「パラコート事件」が大きな影響を与えました。

 「パラコート」は、1980年代に爆発的に売れた除草剤で、草にかけるとすぐ枯れるので、機械除草の代わりに盛んに使われました。当初、「劇物」指定だったので、ハンコさえあれば誰でも買えました。その結果、自殺や犯罪に使われ死亡事故になりました。

 この除草剤は、解毒方法がなかったため、口に入るとものすごく苦しみました。一般的に殺虫剤は解毒方法を確立してから製品化しますが、パラコートは、治療法がないまま「劇物」で売られてしまったのです。多数の犠牲者が出た後、政府は、「毒物」指定に変更しました。この一件で、「除草剤=毒物」というイメージが世間に広がってしまったのです。

 現在では、同様の効果があり、毒性を大幅に弱めた除草剤が製品化されています。

伊藤(操) 実は1970年代まで、除草剤のイメージはむしろプラス方向でした。「公害雑草」と言われるほど、繁茂したセイタカアワダチソウの抑制に効果のある除草剤「アシュラム」が、テレビでも好感を持って紹介されました。これはセイタカアワダチソウの地下茎の成長点を止める画期的な薬剤です。