今年7月に閣議決定された、「エネルギー基本計画」では、「再生可能エネルギーの主力電源化」が盛り込まれた一方で、エネルギーミックス(望ましい電源構成)の比率(22~24%)は据え置かれた。経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長に、同計画を受けた今後の再エネ政策の方向性に関して聞いた。インタビュー前半では、「主力電源化」への2つの課題など、今回の後半では、固定価格買取制度(FIT)改正に伴う「失効」案件の動向や、買取費用総額「4兆円」の重みなどがテーマとなった(関連記事:「再エネの主力電源化は世界的な流れ」、経産省・新エネルギー課の山崎課長に聞く=前半)。

20GW以上もの案件が失効へ

固定価格買取制度(FIT)を改正した大きな目的の1つが、「設備認定」から「事業計画認定」への移行に際し、認定だけ取って建設に着手しない「滞留案件」を一掃することでした。失効の規模は、最終的にどの程度になりそうですか。

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
(撮影:清水盟貴)

山崎 今年1月に、2017年3月までに失効した案件として「16GW」という数値を公表しました。16GWという容量は、そうとうな規模であり、これだけの案件が、着工しないまま系統を抑えるなど、大きな弊害になっていたことを考えると、改正FITの大きな成果だと思います。

 これに加え、2016年7月~2017年3月末までの新規認定案件については、経過措置が適用され、認定日の翌日から9カ月以内に接続契約を結ぶことになっています。この経過措置分の失効案件は現在、集計中です。

 2016年度末には、改正FIT適用前の駆け込み申請もあり、適切に接続契約を結んでいるかどうか、現在、電力会社の情報と突き合せつつ、全数をダブルチェックしています。この中にも、相当量の失効案件が含まれていると見ています(編集部注:インタビュー後に開催された8月29日の経済産業省主催の審議会で、経過措置案件の失効分として、2MW以上の太陽光について1.26GW、一般木質・農作物残さバイオマスについて5.56GW、その他区分は集計中と公表)

改正FITへの移行にともなう失効案件の容量に関し、昨年4月に27GWとの試算値を公表後、今年1月に最新試算値として16GWと公表しました。当初の見込みから11GWも下方修正しました。読み違えた原因は何ですか。

山崎 失効見込みが減ったのは、想定したよりも早く接続契約を提携できた案件が相当量あったことが大きく影響しました。通常、接続契約には9カ月程度かかるため、2016年7月以前の認定分のうち、同年6月末までに電力会社に接続申請していない案件に関しては、期限である2017年3月末に間に合わないと判断し、失効分として集計しました。その結果、27GWという失効見込み量になりました。

 しかし、実際には、2016年7月以降に接続申請した案件でも、電力会社と接続契約を締結でき、2017年3月末の提出期限に間に合ったものが、相当量ありました。昨年4月段階の形式的な試算からは、こうした現場での柔軟な運用状況を読み切れませんでした。

 実は、2016年7月以降に接続申請しても契約に至った案件の多くは、事業用低圧案件でした。低圧案件は、特別高圧や高圧案件に比べると、接続申請から契約までの期間も短いことが多いのです。ここでも国内の太陽光市場でいかに事業用低圧が多いかが分かります。