国内は年間5GWの安定市場に

ネクストエナジー・アンド・リソースの伊藤敦社長(出所:日経BP)
ネクストエナジー・アンド・リソースの伊藤敦社長(出所:日経BP)

――温暖化対策の強化や個人投資家の参加によって、今後も国内の太陽光発電市場は、堅調に伸びるとの見方ですね。実際にどの程度の規模で推移すると見ていますか。

伊藤 FIT開始当初の年間10GW近い規模はやはり異常だと思います。IRRで10%を超えるような利回りを求める法人投資家は、やはり徐々に退場していくので、市場は縮小します。IRRで3%台の投資資金を活用し、年間5GW程度の市場に落ち着くとみています。それが国民負担の軽減にもつながりますし、健全な市場に思います。

――太陽光の普及には、再エネの接続可能量(30日等出力制御枠)に達した電力会社による無制限・無補償の出力抑制やローカル系統制約によって、近い将来、限界に達するとの見方もあります。

伊藤 無制限・無補償の出力抑制が条件になることでファイナンスが付きにくくなっているのは事実ですが、本当に問題なのは、実際にどのくらい抑制されるのかが見えないことです。出力抑制が30日を超えたとしても、おおよその抑制量を想定できれば、それを見込んで多少利回りが悪くなることを前提にスキームを組めます。今後、電力需要や太陽光の普及速度などが明らかになるなか、出力抑制の実際が見えてくることで、こうした不透明な状況は解消されるはずです。

 需給バランスに関しては、今後、電力システム改革が進展し、電力価格が市場連動になることで、かなり解決されるとみています。太陽光の大量普及で昼間の電気が安くなれば、ヒートポンプ給湯機の稼働や電気自動車(EV)の充電を昼間にシフトするはずで、昼間の需要はかなり増えていくことになります。

――むしろ、解決が難しいのがローカル系統の制約でしょうか。

伊藤 ローカル系統の制約で、送電線に繋げなければどうしようもありません。今後は、やはり屋根上など、需要地に近い場所に設置していく、というのが基本になると思います。これまで屋根上には長期契約できないなどの制約も多く、当初の予想ほど、設置が進んでいない面もありましたが、ここにきて活発に動いてきたように思います。20年間の使用が契約できない場合など、そうしたリスクを折り込んでファイナンスを引き出すなど、さまざま手法が検討されています。