10月22~23日にかけて、西日本を中心に台風21号が強い勢力のまま接近、上陸した。紀伊半島沖を通過した際、和歌山県では、住宅や鉄道、道路などへの浸水、土砂崩れなどによる被害が発生した。
中でも、貴志川の流域では、川の水位の上昇によって、支流や農業用水があふれ、多くの住宅が浸水した。貴志川は、和歌山県北部を流れる紀の川の支流で、一級河川となっている(図1)。
大規模に浸水した地域の一つが、紀の川市貴志川町丸栖(まるす)である。貴志川の左岸にある。
紀の川に合流する手前で、貴志川が大きな弧状に曲がって流れている内側に位置する。貴志川とほぼ同じ高さ、または川より低い土地に、田んぼが多く広がっている場所で、所々、住宅地がある。
こうした場所のため、用水路が東西南北に細かく通され、貴志川とつながっている。
今回、台風による大雨によって、用水路に流れ込む雨水が増えた上、貴志川の水位が上がったことにより、用水路の排水処理が追いつかなくなった。行き場がなくなった水が用水路から溢れてしまい、「内水浸水」と呼ばれる氾濫が生じた(図2)。
今回、浸水によって一部の住宅地が孤立し、住民をボートで救出したり、ポンプ車を使って排水し、水を抜くといった処置が講じられた。
近隣住民によると、この地域では、これまでも同様の浸水被害に遭うことが続いてきた。近いところでは、2011年の豪雨や2013年の台風が記憶に新しいという。