今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 最近では、ドローン(無人小型飛行体)による空撮から、PID(potential-induced degradation)の疑いのある太陽光パネルを発見する例が出てきたという。

 PIDは、結晶シリコン型の太陽光パネルで生じる。特定の条件下において、太陽光パネルに高い電圧がかかり、出力が低下する不具合を指す。

 太陽光パネル内のセル(発電素子)とアルミフレーム間に電位差が生じることで起き、高温・高湿、システム電圧などの条件が影響して生じると推測されている。PID耐性の低い太陽光パネルで出力低下に至ると、1年間で70%以上も出力が下がる場合もあることが知られている。

 2012年ころにドイツなどで大きな問題となり、その後、太陽光パネルメーカー各社は、PIDに対する耐性を高めたパネルを製品化した。現在、市販されているパネルは、ほぼPID耐性を高めたパネルとなっている。

 今回、エネテクがPIDの疑いを発見した太陽光パネルは、この対策が施される以前の製品とみられている。

 出力約300kWの太陽光発電所において、太陽光パネルの状態をドローンで調べた(図1動画)。ドローンでは、赤外線カメラを使って地上に並んでいる太陽光パネルの熱分布の画像を撮影する。この画像から、過剰に発熱しているパネルやパネル内の部位を特定する。

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図1・動画●高密度で大量のホットスポットが生じたパネルがわかる
PIDによる出力低下が生じていることが疑われる(出所:エネテク)

 すると、複数のセルを直列で接続したクラスタ単位の不具合が多く見つかった。

 加えて、セル内で周囲に比べて過剰に発熱しているホットスポットが、数多く見られるパネルが多数あることがわかった。植物が群生するように、密度が高く大量に発生していた。

 こうしたホットスポットの多い太陽光パネルにPIDが疑われるという。PIDが原因で出力が低下している可能性がある。

 以前、同じようにドローンによるパネル点検によって、最終的にPIDによる出力低下を見つけたことがあった。今回の太陽光発電所も、その際と似た熱分布を示していたことから、このように推測できた。

 PIDによる出力低下が生じているのかどうかは、その後、二つの検査を通じて特定していく。まずI-V(電流-電圧)特性を調べる。そこでもPIDによる出力低下が疑われたら、最後にEL(エレクトロ・ルミネッセンス)検査でさらに確かめる。