日本は世界有数の地震国。家屋の損壊するような大きな揺れも多い。大規模な震災が起きた時、太陽光発電システムにどのような影響が生じたのか、どのように安全が保たれ、どのように被災したのか――。今回のシリーズでは、住宅用を中心に太陽光発電のオーナーで構成する、特定非営利活動法人(NPO法人)・太陽光発電所ネットワーク(PV-Net:東京都文京区)による調査結果や提言などを紹介する。

 PV-Netは、2003年5月に設立され、会員数は2626人(2016年12月時点)で、交流や情報交換、導入や運用の相談・支援、社会への提言といった活動を通じて、市民の目線で太陽光発電の普及などを目指している。

 日本では、1990年代後半に太陽光発電システムが住宅屋根に広がり始めて以降、2007年7月の新潟中越沖地震、2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震と、大きな被害を引き起こした地震が次々と起きている。これらの震災の後、PV-Netはその都度、現地を訪問して住宅用太陽光発電システムに関する被災の調査や、発電システムの活用、さらに、応急措置や復旧などに取り組んできた。

 住宅用の太陽光発電システムと震災に関して、それ以前の1995年1月に起きた阪神淡路大震災における教訓として、パワーコンディショナー(PCS)への自立運転機能が関心を集めた(関連コラム)。

 自立運転機能は、PCSのオプションとして搭載されたこともあって、東日本大震災後の調査では、期待ほど活用されなかったという。PV-Netによると、この結果を受けて、自立運転機能の啓蒙に努めたことも奏功し、熊本地震後の調査では、利用率が大幅に上がり、認知度が高まっていることがわかった。

 東日本大震災後の調査では、津波で被災した沿岸地域の住宅を中心に、現地に出向いて調査した(図1)。

図1●海岸沿いの地域を中心に調査
図1●海岸沿いの地域を中心に調査
左は岩手県陸前高田市、右は岩手県宮古市の調査先の住宅の例(出所:PV-Net)
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 代表理事の都筑 建氏は、「海岸沿いの調査には、緊急性を感じていた」と言う。津波によって、住宅そのものが激しく損傷・倒壊している場所が多かったことはもちろん、被災した家から火災が発生し、周囲に燃え広がっている画像を見たからという。

 被災住宅からの出火原因に、太陽光発電システムのショート(短絡)があるかもしれないと危惧していた。

 「地球や社会にとって良いとされている発電技術でも、災害時に火災の原因になりかねない、というのでは、普及を阻害してしまう。そうした危惧を払拭してこそ、社会に浸透するはず」との思いがある。

 このため、現地調査では、住宅用太陽光発電システムの状況の確認だけでなく、所有者の要望によっては、損傷した設備の応急措置や復旧まで、支援したいと考えた。実際に現地で活動を始めたのは、地震発生から2カ月後の5月14日になったことから、応急・復旧については、本格的に実施できなかった。

 都筑氏ほか11人が現地に入り、活動した。こうした調査や支援の活動資金は、PV-Net内からの寄付や、現地で調査や支援にあたったメンバーの負担で賄った。

 また、避難所などにおける電源の確保の支援も構想した。PCSの自立運転機能を使う。

 住宅用太陽光では、定格出力5kWや10kWのPCSの場合、自立運転機能に切り替えることで、停電時でも出力1.5kWの電力を使える。

 東日本大震災後の調査や支援では、この自立運転機能が期待ほど広く使われなかったという。理由の一つには、PCSのオプション機能でもあり、避難所となった施設に太陽光が導入されても、採用したPCSが自立運転機能を備えていないことも多かった。