3種類のバイオマスからメタンガス

 3種類の有機系廃棄物とは、「下水汚泥」と「し尿・浄化槽汚泥」、そして「生ごみ」だ。下水汚泥は、水処理施設から配管を通じて送られてきたものを濃縮して投入する。し尿・浄化槽汚泥と生ごみは、専用の収集車が集め、運び込まれる。

 処理量は、下水汚泥は351m3/日、し尿・浄化槽汚泥は121m3/日、生ごみは59t/日を見込んでおり、これらから得たメタンガスで1日に最大2万4000kWhを発電できる。こちらもFITを活用して、39円/kWhで売電する。

 加えて、発酵後に残った残渣は、キルン式の炭化設備で蒸し焼きにして炭化燃料を製造する。これは、石炭代替のバイオマス燃料として活用できる。計画では、6t/日を製造でき、石炭の需要家などに販売する(図3)。

図3●キルン式の炭化設備
図3●キルン式の炭化設備
(出所:JFEエンジニアリング)
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 水分の多い有機系廃棄物を嫌気発酵させて可燃ガスを取り出し、ガス発電を行う手法は、畜産業や自治体などでこれまでにも導入例がある。ただ、従来は下水汚泥や生ごみなど単一の有機系廃棄物を対象にした設備が一般的で、今回のように複数の有機系廃棄物をまとめて発酵させ、これだけの規模でガス発電を行うのは国内で初めてとなる。

 豊橋市上下水道局・下水道施設課の七原秀典主幹は、「未利用エネルギーの有効活用を目指し、まず下水汚泥のメタン発酵を検討した。だが、バイオマス量が少ないため事業性に課題があった。そこで、家庭や事業所から出る生ごみも対象にすることを検討した。その結果、下水汚泥と一緒に発酵することで投資効率が高まるなど、利点が多いことが分かり、それを前提にバイオマス活用事業を進めた」と言う。