海面よりも低い干拓地

 一本松展望園から急な坂道を下ると、太陽光発電所の建設地を囲むように通っている小道に出る。さらに進むと、錦海化学(岡山県瀬戸市)の本社工場が目に入る。同社は、1961年に帝人グループと錦海塩業の出資で設立された。実は、「瀬戸内Kirei太陽光発電所」の用地は、かつて錦海塩業が、製塩事業を営んでいた塩田だった。

 「錦海塩田」として知られ、東洋一の規模を誇っていた。錦海湾に堤防を築いて干拓した約500haの土地に大量の海水を引き込み、日光で水分を蒸発させる天日採塩法で生産した。だが、70年代に入ると製塩業はイオン交換法に転換が進み、競争力がなくなった。錦海塩業は、塩づくりから撤退を余儀なくされた。同社は、残された広大な干拓地を活用した産業廃棄物処理に活路を求めた。しかし、2009年に錦海塩業は倒産。その後、2010年12月に瀬戸内市が塩田跡地を取得した。

 錦海塩田の跡地と錦海湾を隔てる堤防に立ち、海側と陸側を見比べると、海水面よりも干拓地の地面が低いことがよくわかる(図2)。堤防の下からは、いまでも1日3万5000tもの海水が浸み込んでおり、その分をポンプで海に汲み出すことで、干拓地として維持している。

図2●錦海湾堤防で堰き止められた海水面は干拓地より高い(出所:日経BP)
図2●錦海湾堤防で堰き止められた海水面は干拓地より高い(出所:日経BP)
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 太陽光パネルの基礎・架台は、こうした特殊な地盤の中に設置することになる。土壌に含まれる塩分濃度が高く、低い土地のために雨水が溜まりやすい。加えて、一部は産業廃棄物の最終処分場として埋め立て、覆土したため、本格的に造成できない。